研究概要 |
これまでの研究で、ラットの中脳スライス標本においてパッチクランプ法を用いて中脳ドーパミン細胞に対するコリン作動性入力の作用を解析し、ニコチン受容体の活性化によって細胞内に流入するCa^<2+>によって活性化されるfulfenamic acid (FFA)感受性でnegative slope conductanceを有する内向き電流が、ムスカリン受容体の活性化によるSKチャンネルの抑制によるafterhyperpolarizationの減弱と協同的に作用してドーパミン細胞の脱分極応答を顕著に増強し、発火パターンを孤発モードからバーストモードに変換することを示してきた(Yamashita & Isa,2003a,2003b)。今年度の研究では、ドーパミン細胞においてシナプス前線維の電気刺激によって誘発させたEPSPにアセチルコリンのパフ投与を1-2秒先行させるとEPSPが顕著に増強されることを観察した。この増強効果はNMDA受容体の活性化や低閾値Caチャンネルの活性化には依存せず、FFAやphenytoinによって顕著に抑制された。従ってこのアセチルコリンによるEPSP増強効果は上記のFFA感受性電流の活性化によって起きることを明らかにした(Yamashita & Isa,2004)。この結果は、コリン作動性入力によってドーパミン細胞の発火パターンが持続発火モードからバースト発火モードに切り替わるためのメカニズムを説明したものといえる。
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