研究概要 |
1.ヒト脳脊髄液中におけるβセクレターゼ産物の検出 βセクレターゼは病原ペプチドであるアミロイドβの産生にかかわり、アルツハイマー病の発症に中心的な役割を果たしているプロテアーゼである。我々は、βセクレターゼがゴルジ装置内でα2,6シアル酸転移酵素を生理的基質として切断することを報告した。切断を受けたシアル酸転移酵素は細胞外に分泌されるが、その際のN末端としてEFQ…のアミノ酸配列を持つことを明らかにした。本年度は、ヒトシアル酸転移酵素の切断端に対する抗体を作製した。この抗体により、ヒト脳脊髄液における抗原(シアル酸転移酵素)の検出を試みたところ、わずか15μlの試料で明瞭なシグナルを得ることができた。この抗原量を測定することによって、ヒトの脳内のβセクレターゼ活性をモニターできる可能性がある。最近、アルツハイマー病患者脳では、βセクレターゼ活性が上昇することが報告されている。今回開発された抗体を用いて、アルツハイマー病の早期診断を目指している。 2.シアル酸転移酵素のアミノプロテアーゼによるプロセッシング シアル酸転移酵素はβセクレターゼによる切断を受けるが、その後ゴルジ内腔に存在するアミノプロテアーゼによってプロセッシングを受ける。この機構の詳細を解析した(S.Kitazume, et al.:Characterization of α2,6-sialyltransferase cleavage by Alzheimer's β-secretase(BACE1)J.Biol.Chem.278,14865-14871,2003)。 3.シアル酸転移酵素のin vivoの切断 シアル酸転移酵素のβセクレターゼによる切断がin vivoで起こることをβセクレターゼノックアウトマウスを用いて証明した(S.Kitazume, et al.:In vivo cleavage of α2,6-sialyltransferase cleavage by Alzheimer's β-secretase(BACE1)J.Biol.Chem.Submitted).
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