研究概要 |
ユビキチンプロテアソームシステム(UPS)による蛋白質の品質管理、即ち細胞内に生じた異常構造蛋白質を選択的に破壊することは、ニューロンのような非分裂細胞の恒常性維持に必須である。本年は、UPS酵素の中で、品質管理に関わるユビキチンリガーゼCHIP, Parkin, SCF(Fbs)について研究した。その結果、(1)シャペロン依存性リガーゼCHIPのノックアウト(KO)マウスを作製したところ、CHIP欠損マウスが失調性歩行異常を呈することを見出した。(2)常染色体劣性パーキンソン症候群(AR-JP)の原因遺伝子産物であるParkinが26Sプロテアソームと会合すること、そしてこの相互作用の破綻にによってAR-JPが発症することを突き止めた。(3)2002年、我々はERAD(小胞体関連分解)に関与するユビキチンリガーゼとしてニューロンに特異的なSCF^<Fbs1>を報告したが、本年はさらにユビキタスに発現しているSCF^<Fbs1>のファミリー酵素としてSCF^<Fbs2>を見出し、このSCF^<Fbs2>もERADに関与することを証明し、糖鎖識別リガーゼ酵素が小胞体における品質管理機構に普遍的な役割を果たしていることを証明した。(4)オートファジー(自食作用)はオートファゴソーム(自食胞:細胞成分を取り込んだ二重膜小胞)による標的成分の取り囲みの形成機構であり、その後リソソーム/液胞と融合して内容物を分解する細胞内の蛋白質分解機構である。本年、我々はオートファゴソーム形成に関するAtg7遺伝子の条件的KOマウスの作製に成功した。そして肝臓でオートファジーを欠損させると丸肝臓の肥大と肝炎を引き起こすのみならず、ユビキチン化蛋白質の凝集体が細胞内に大量に集積するという驚くべき結果を得た。この結果、細胞内の蛋白質の品質管理には、UPSとオートファジー・リソソーム系が連携していることが判明した。
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