研究概要 |
本研究の目的は、計算物理学分野のアプリケーションに焦点を当て、Grid技術による広域並列分散コンピューティングにより新たな展開が可能になる応用の探索的技術開発と、それを支援する並列プログラミングシステムを構築することである。当該年度においては、これまで開発してきた、Grid上の並列プログラミングのための遠隔呼び出しを行うミドルウエアOmniRPCの詳細な性能評価、OmniRPCを用いたアプリケーションでの実証実験を行った。 性能評価では,筑波大学,豊橋技術科学,徳島大学,産業技術総合研究所の5つのサイトにあるクラスターからなるグリッド環境を構築し,ワーカーの実行時間と通信データ量を変化させ,どのようなワークロードの特性を持つアプリケーションにおいて有効なのかを明らかにした。その結果、ジョブの実行時間が2秒でも,ネットワークの性能が高い場合,性能が得られることがあり、16秒の場合ではほとんどの場合において台数効果を期待することができるものの,ネットワークの性能が低い場合において1MB以上の転送を行なうと性能が得られない、などの目安が得られた。 また,アプリケーションとして,分子配座探索プログラムをグリッド環境で並列化し実証実験を行った。このプログラムは、対象とする化合物が取り得るすべての立体配座を自動的に発生させ,化学的に重要な配座異性体の最適化構造をもれなくみつけ出すプログラムである。グリッド環境において大規模な問題について実行し、その有効性を確認した。また、計算物理学分野のグリッドアプリケーションとしてこれまで開発してきた、重力専用計算機GRAPE6をグリッド環境にて共有利用するためのシステムHMGS-Gについてはサーバプログラムを見直し,複数サイトからの利用を円滑に行えるように改善した. なお、開発したソフトウエアOmniRPCについてはhttp://www.omni.hpcc.jp/OmniRPCで公開している。
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