研究概要 |
非占有環境で頑強な性能を発揮する高速数値計算(LU分解):Phoenixの特徴である動的なノードの増減可能性を生かして,共有されたクラスタ環境(非占有環境)で高性能を発揮するLU分解アルゴリズムの設計と実装を行った.環境の占有時には,同じ環境でのAtlas+HPLとほぼ同じ性能,非占有時には上回る性能を得た.計算途中に動的にノードを増加させ,負荷の割り当てを実行時に修正することによって,実際に追加したノードの分だけ一性能が向上することも確かめられた.この結果により,非占有環境であいた資源を獲得し,混雑した資源を解放しながら高性能を維持し続ける,今後の環境で有望な,動的な高性能アルゴリズムの例を示すことができた. Grid用通信システムにおける高速な資源発見と経路構築:Phoenixの使い勝手と実装を大規模なスケールにおいて大幅に改善した.Grid環境における通信を簡便に行うためには,第一に,firewallやNATなどの制限を乗り越えてアプリケーションレベルでメッセージの経路付けを行う仕組みが必要である.また,現在典型的な大規模環境においては,静的なノード名を持たないノード(DHCPで設定されたノード),初期故障ノード,計算途中に追加されるノード,動的にノードを選択するスケジューラ,などの存在により,ユーザが計算に参加するノードを事前に記述し,参加ノードに正確に伝えることが困難になってきている.そこで通信システムは計算が始まってから参加ノードを発見し,それらの情報を参加ノードに伝える仕組み(資源発見)を備える必要がある.そしてそのようにして発見された資源間で接続を確立し,経路構築を行う必要がある.我々のシステムは,多数のノード間で,ネットワーク設定上許されたペアすべての間で接続を行い,かつ構築された接続の上で任意ノード間のメッセージを経路づけする.我々は、400プロセスを超えても,事前に接続情報を(静的に)記述した場合み数倍程度の時間(30秒程度)ですべての最短経路を求めることに成功した.
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