研究概要 |
我々は,人間が日常簡単にこなしている運動や作業の手順をお手本動作の観察に基づきモデル化し,ロボットを用いて作業を再現することの可能な枠組みについて研究を進めている.作業をモデル化するためには,作業を達成するためのキーとなる動作をお手本動作からうまく抽出し,これを記号化(プリミティブ)することで作業の進行を抽象化し,さらに再生時においてはプリミティブから妥当なロボット動作を生成する必要がある. 本年度は,従来の剛体を扱う作業を柔軟物を含む作業に拡張する第一歩としてひも結び動作に着目し解析を試みた.ひも結びでは,ひも全体の細かい形状はさして重要ではなく,結び目を再現するためのひもの交点の相互関係を再現することが重要となる.そのため,結び目を2次元上に射影し,ひもの端点から順に現れる交点とその上下関係を記号化したP-DATAと呼ばれる形式によって,ある時刻でのひものトポロジーを記述する.また,閉じたひものトポロジー変化は3種類の「ライデマイスター移動」と呼ばれる操作の組合わせで実現可能であることが「ひも理論」で証明されており,これに開いたひもを扱うための「クロス」と呼ばれる端点がひもを横切る操作を加え,都合4つの基本操作の組合わせによって任意のひも結びが記述できることを示した.さらに,連続するP-DATAからその間に行われた基本操作を一意に決定する手法と,基本操作列からなるモデルから結び目を再構成するための手法を提案し,代表的な複数のひも結びを解析することで本手法の有効性を示した. また,多様な日常作業を抽象化するためには,特別な前提知識に頼ることなしに観察された作業から冗長部分を分離し,作業遂行上必須の箇所を抽出し記述する必要がある.このために,本質的には同一の作業を表す複数の教示動作から,動的な動作を含んだ作業の遂行に必須の動作を抽出しモデル化する手法の開発を行った.
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