研究概要 |
間(ま)を合わせることは人間同士の協調作業において不可欠である.しかし,この間が合うことは物理的な同調とは異なることが知られている.したがって人間と機械の協調においても,従来の物理的リアルタイム性に基づく協調に加えて,認知的同時性としての「間」の共有も考慮されなければならない.本研究の目標は,人間と人工物が互いに間を合わせタイミング調整できる共創型インタフェースを構成することにある.昨年度は第一段階として,一定周期のリズム音に合わせてタッピングする、同期タッピング課題におけるタイミング制御をモデル系として,間の指標となる非同期量の時間発展を心理学的に調べた.その結果,能動的注意からの影響を受ける明在的機構と,その影響を受けない自動的機構が協同的に関わる過程であることが示された.今年度は,この成果を踏まえて同過程の時系列解析を行なった。具体的には、非同期量の時間発展のスペクトル解析を行い、そのピーク成分とオフセット成分に分離して解析した。リズム音の周期が600〜1500ms程度の時にはオフセット成分に強い対数則の関係が見られ、1/f^n型のフラクタル的なダイナミクスを示すことが明らかにされた。一方、リズム音の周期が1800〜3600ms程度の時にはピーク成分が顕著になり、固有周期型のダイナミクスを示すことが示された。後者は定常性や安定性を特徴とする力学系であることを意味しており、前者は非定常で不安定であることを特徴とする力学系を意味する。さらに、これら両者のダイナミクスに基づいてタイミング制御がなされる過程の時間発展も解析した。これらの結果は、間(ま)の共創過程のモデル化へ向けての重要な情報となる.
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