研究概要 |
本研究では,重症心身障害児(重症児)施設と居宅をデジタル通信回線で接続して医療・福祉を支援するITシステムを開発し,またその実証運用を行い,これを手がかりとして実用化のための機器システムおよび社会モデルを提言することを目的とした。本年度は,4ヶ所の重症児居宅に端末機器を増設し,6ヵ月から1年にわたる実証運用を実施した。運用のプロトコルとしては,居宅システムのみでのバイタル信号測定を少なくとも数日に1回実施するよう指示した。バイタル信号は本人や介護者(家族)の負担度を考慮して,血中酸素飽和度とこれに付随して得られる脈拍数の2項目とした。これらは6時間毎にセンターシステムから自動収集された。また,概ね週1回,センターからの接続によりテレビ電話による医師の診療を行った。その内容は健康状態や疾病の診察,日々測定されたバイタルデータに関する診断,生活に関する指導・相談を行った。実証運用の評価は,バイタル信号の時系列解析,医師による電話診療のカルテ記録,介護者との面談を手がかりに行い,本ITシステムの必要性や有用性が確認された。また,実用型システムの要件として以下の事項を明らかにすることができた:呼吸機能をモニタするバイタル信号,バイタルセンサのテレメトリ化および伝送のモバイル化,聴診機能および近接画像機能を備えたテレビ電話。特にバイタル信号は,非侵襲測定可能な(1)血中酸素飽和度,(2)脈拍数,(3)終末呼気炭酸ガス分圧,(4)呼吸数,(5)聴診,(6)体温バの6項目を選択することにした。現在,これらバイタル信号を重症児で安定して測定できるセンサの選定や開発・改良に着手している。さらに,通信のモバイル化に関する基礎実験を行い,実用型支援システム開発のための基礎固めと準備を行った。
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