研究概要 |
1.アミノグリコシド系抗菌薬はNMDA受容体のR-domainに結合して聴覚障害を引き起こす。そこで、約360アミノ酸残基よりなるR-domain蛋白質(NR1-R,NR2A-R及びNR2B-R)を大腸菌に大量発現さぜ精製し、ポリアミンの一つであるスペルミンとの結合活性とそれに対するアミノグリコシド系抗菌薬の効果を測定した。スペルミンのKd値はNR1-R,NR2A-R及びNR2B-Rでそれぞれ、17,135及び69μMであり、ネオマイシン、カナマイシン、パロモマイシン及びストレプトマイシンはいずれも150〜300μMでNR1-R及びNR2B-Rとスペルミンの結合を阻害したが、NR2A-Rとスペルミンとの結合を阻害しなかった。この結果はアミノグリコシド系抗菌薬がR-domainのスペルミシ結合部位に結合してNMDA受容体を活性化し、聴覚障害を引き起こすことと良く相関していると考えられた。 2.大腸菌には37種の推定薬剤排出蛋白質が存在しており、これらの蛋白質は大阪大学の山口博士らにより全てクローニングされている。この中で、ポリアミン排出に関与する蛋白質をコードしている遺伝子どして、acrAB、ydgFE、yceA、ydeAの4種を同定した。これらがポリアミンと同様にアミノグリコシド系抗菌薬も排出するかどうか検討中である。 3.CadB(リジン/カダベリンアンチポーター)とCadA(リジン脱炭酸酵素)をコードするcadBAオペロンの発現が酸性条件下の細菌の生育に重要であることを明らかにした。この両蛋白質の発現により、大腸菌の外側の環境を中性化し、かつプロトン駆動力を作ることが明らかとなった。病原性大腸菌が酸性条件下VNCの状態で生存するために、cadBAオペロンの発現が重要と考えられた。
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