研究概要 |
本年度,抗ウイルス免疫応答系においてIFNとp53との新しい関連性を報告した.癌抑制因子であるp53の遺伝子がIFN-α/βによって発現誘導されることを見出した.また,p53はウイルス感染によってリン酸化され,活性化されることも明らかにした.p53欠損細胞では水庖性口内炎ウイルス(VSV)感染によるアポトーシスが阻害され,結果的には上清中のウイルス産生のレベルが野生型細胞の場合と比較して著明に高くなる結果を得た.更にP53欠損マウスが野生型マウスに比べ,VSVに対して感受性であり,また,ウイルスが過剰に増殖し,死亡に至る割合が高いことが見出された.さらに,IFNAR1欠損細胞を用いた解析より,ウイルス感染により産生されるIFN-α/βによって誘導されたp53も同様の役割を担っていることが示された.即ち,ウイルスによって活性化されたp53は感染細胞を迅速かつ効率のよい細胞死をもたらすことによってウイルスの複製や周囲への拡散を抑制することに寄与していると考えられた.一方,IFN-α/βはウイルスのみならず様々な病原体関連分子により樹状細胞において発現が誘導され,樹状細胞の成熟・活性化に重要な役割を担っていることも明らかにした.即ち,マクロファージや樹状細胞においてLPSや二本鎖RNA刺激によりIFN-α/β遺伝子の発現誘導が認められ,その誘導にIRF-3やIRF-7が関与しているという結果を得た.また,ウイルス感染時における樹状細胞の活性化はIFN-α/β依存性であることも見出した.二本鎖RNAの認識受容体であるTLR3とPKRの発現誘導がIFN-α/βにより転写レベルで制御されていることも明らかにした.更に,IFN-α/βはTLR3,PKRのみならず,それ以外にもウイルス認識に関わる分子群の誘導に関わっているという結果をTLR3,PKR欠損マウスを用いた検討から明らかにした.
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