研究概要 |
(1)HIV-1インテグラーゼ変異体による解析: HIV-1ウイルスゲノム(cDNA)の核内輸送におけるインテグラーゼの機能的関与をウイルスcDNAとの結合能を低下させた変異体を用いて検討した。HIV-1インテグラーゼのウイルスcDNA結合に関与すると考えられているアミノ酸残基(PYNP:142-145位)および三つのリジン残基(KKK:156,157,160位)にアミノ酸置換あるいは欠損変異を導入した新たなHIV-1インテグラーゼの変異体を作製した。HIV-1インテグラーゼ蛋白の生化学的解析より、ウイルスcDNAとの結合能が著しく低下(野生型インチグラーゼ比で10%以下)する変異体(DPYNP, N144Q, KKK>AAA)を得た。これらの変異体のウイルス学的性状解析から、ウイルス感染性を顕著(親株比で1%以下)に低下させる変異体(DPYNP, N144Q, KKK>AAA)を得た。さらに、感染細胞の核分画中のウイルスcDNAの定量解析およびHIV-1特異的PNAプローブをもちいたFISH解析よりこれらの変異体のウイルスcDNAの核内移行過程が阻害されていることを確認した。 以上の結果はインテグラーゼがウイルスゲノムの核内移行過程に関与する主要ウイルス因子であることを示すものと考えられる。 (2)siRNA発現レンチウイルスベクターの開発: 各宿主因子のHIV複製における機能的意義を検討するため、各因子欠損細胞株を樹立を目的としたsiRNA発現ベクターの開発を行った。レンチウイルスベクターを用いH1プロモーターの下流にヘアピン型siRNA(shRNA)を発現させた。このレンチウイルスベクターにより発現させたsiRNAの配列特異的抑制効果は、従来の合成siRNAあるいはベクター型siRNA発現系と比べて、その持続性(35日以上)および非分裂細胞への導入効果(90%抑制)といった点で優っていることを示した。Rch-1を標的としたsiRNAを導入させた293T細胞では,WB法量的(1/10)に低下した細胞株を得た。現在、siRNAによる他の宿主因子欠損株を樹立し、ウイルス感染各素過程への影響を検討している。
|