研究概要 |
2003年3月に米国FDAがFuzeon (Trimeris, Roche)の使用を承認したことにより、エイズ及びHIV感染症の治療薬として、現在HIV侵入阻害剤が注目されている。我々は、このHIVが細胞に侵入する動的超分子機構のうち、1. CXCR4と2. gp41の2つを創薬のターゲットとし阻害剤(entry inhibitors & fusion inhibitors)の開発研究を行っている。(1. CXCR4)我々は以前、T細胞指向性HIV-1 (X4-HIV-1)の細胞への侵入を特異的に阻害するCXCR4アンタゴニストT140(アミノ酸14残基ペプチド)を発見した。また、T140のpharmacophore Arg^2,Nal^3,Tyr^5,Arg^<14>を含む環状ペンタペプチドライブラリーを構築し、この中からT140に匹敵する高活性を有する低分子化合物FC131を見い出した。今年度、FC131の各構成アミノ酸のAlaスキャン、および5残基の環状ペプチドの各アミド結合部位をN-メチル化することにより、活性発現に必要なアミノ酸残基とアミド結合の同定を行った。これにより、FC131を超える有用なリード化合物FC122が見い出された。さらに、14残基のT140誘導体の新規pharmacophoreとして、N末端の芳香族アシル基(p-fluorobenzoyl moiety等)を発見した。これらpharmacophore群を用いた低分子化により、別の新規リード化合物を創出した。(2. gp41)一方、我々は以前、C34(gp41のC端側α-helix領域ペプチド)を基にde novo設計した34アミノ酸残基ペプチドSC34およびSC34(EK)が、Fuzeonをはるかに凌ぐ膜融合阻害剤であることを見い出した。今年度、SC34(EK)よりC末端が5残基短いSC29(EK)を基に、helix形成能力の向上と非ペプチド化を考慮し、Glu-GluとLys-Lysのユニットをジペプチドミメティックに置換した種々の誘導体を合成した。以上今年度は、T140とC34を基盤分子として、低分子化および非ペプチド化をもとにした医薬品としての適合化研究を推進した。
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