研究概要 |
ナイーブT細胞の成熟には、主要組織適合抗原(MHC)/T細胞受容体(TCR)複合体を介した抗原特異的なシグナルとB7/CD28複合体を介した補助刺激と呼ばれる抗原非特異的なシグナルの両方が必要である。我々は、前者のシグナル関わる分子として、MHCクラス2(Nature Immunology,2002),LFA-3(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1999)の構造解析を行った。また後者の補助刺激の構造を基にした知見を得るため、B7-1細胞外ドメインの構造(Immunity,2000)、及びB7-1/CTLA-4複合体の結晶構造(Nature,2001)を明らかにした。これらの分子は、T細胞と抗原提示細胞の接触領域に局在化し、細胞間の距離が140〜150Aの領域を形成する。この領域に局在化する蛋白質、及びIL-2/IL-2受容体(R)複合体及びIL-15/IL-15R複合体の構造解析を計画した。 補助刺激分子の1つであるラット(r)CD48をLec3.2.8.1細胞により発現させて精製し、結晶構造解析を行った。rCD48と構造が既知であったrCD2の構造を基に、複合体のモデルを作成した。現在、論文の投稿準備中である。また、IL-15及びIL-15Rのα鎖の発現系を大腸菌を用いて作成した。これらの蛋白質は、His-tag修飾しているため、Niカラムを用いて初期精製を行った。Niカラムによる精製後の蛋白質は不純物を含むため、さらなる精製法の確立中である。さらに、T細胞と抗原提示細胞間の分子認識機構について、Nature Immunologyに総説を執筆した。
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