研究概要 |
申請者らが樹立してきたPLC-γ2欠損マウス(Hashimoto et al.J.Immunol.,165,1738-1742,2000)は、著しいTI-II応答性の低下を示しており、このシグナル分子がB細胞の成熟、または、成熟役抗体産生細胞への分化障害が生じていることを強く示唆している。本年度は、PLC-γ2がB細胞の最終成熟過程に必須の役割を担っているかどうか。担っているとしたら、どのようなメカニズムで関与しているかを明らかにした。 Rag欠損マウスでは、リンパ球以外の組織が野生型の遺伝背景なので、PLC-γ2欠損マウスより調整した骨髄細胞をadoptive transferすることにより、PLC-γ2欠損マウスのphenotypeがリンパ球及びリンパ球以外の組織の異常かを明らかにすることができる。その結果、B細胞自身がPLC-γ2欠損することにより、最終分化異常が生じていることを明らかにすることができた。 また、B細胞の最終分化に寄与している細胞表面のレセプターとしては、BCRとBAFFレセプターがあるが、PLC-γ2が両方のレセプターのシグナル伝達共に関与していること。又、これら両方のレセプターのシグナル共にB細胞の最終分化及び外来性抗原に対する反応に必須であることを明らかにした。 BAFFレセプター刺激、またはBCR刺激と異なり、PLC-γ2酵素活性の指標であるIP3及びカルシウムの上昇は見られない。したがって、PLC-γ2はBAFFレセプターシグナルに酵素活性というよりは、むしろ酵素活性非依存性のアダプター活性として関与していることが強く示唆される。
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