研究概要 |
EBウイルスはヒトB細胞に潜伏感染し宿主に終生住み着くヘルペスウイルスであり、免疫抑制時に潜伏していたEBウイルスが様々の疾病や腫瘍の原因となると考えられる。本研究は、EBウイルスの感染初期に同時に共発現する核蛋白の働きを分析することによりヒトB細胞をターゲットとするEBウイルス感染様式の解明に近づくことを目的とし、潜伏感染成立に必須のウイルス核蛋白EBNA-2、EBNA-LPの機能解析を通してEBウイルス潜伏感染機構解明を目指した。すでに我々は、EBNA-2が転写活性化因子としてウイルスや細胞の遺伝子を活性化し、EBNA-LPはEBNA-2の転写活性化を促進する補因子機能を持つことを報告してきた。本研究では、われわれが発見した、野生型の転写活性化補因子機能に対しドミナントネガティブ効果を持つEBNA-LP変異体を有効利用し、変異体の導入遺伝子量とドミナントネガティブ効果との相関を確認した。メカニズムの解析の過程でさらにEBNA-LP自体の多量体形成能とEBNA-2との相互作用能を見いだし、相互作用の領域を詳細に解析し、EBNA-2の酸性アミノ酸領域とEBNA-LPの作用が重要であることを明らかにした。これによりEBNA-2とEBNA-LPの相互作用が協調的転写活性化の基になっていることを初めて実験的に証明した(Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 2004)。現在までに、EBNA-LP変異体を発現するEBウイルス感染細胞を樹立し、細胞増殖などの特徴および宿主細胞遺伝子の変化を検索しており、続々と興味深い結果を得つつある。また、本邦健常人のEBNA-2に対する抗体の保有状況を年齢別に詳細に検討してきた結果をまとめ報告した(Clin.Diag.Lab.Immunol., 2004)。
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