研究概要 |
多因子疾患の感受性遺伝子を同定する方法として、多型マーカーとの連鎖不平衡を利用し、大規模な領域を関連解析でスクリーニングする手法が広く検討されている。本研究では、多型性に富むマイクロサテライトをマーカーとして利用し、非定型抗酸菌症と一義的に関連する一塩基多型(SNP)を同定することを目的とした。非定型抗酸菌症については、対象をM.aviumおよびM.intracellulare、すなわちMAC症に限定し、ATS1997基準に基づいて診断された症例(治療中、治療後を問わない)で、HIV症例、血液疾患症例(白血病、悪性リンパ腫など)、免疫抑制剤(ステロイドを含む)使用例は対象から除き、既存の肺病変の有無は問わない、説明と同意の可能な症例を対象とし、すでに200例以上の血液試料を収集した。 候補遺伝子としては、本年度、Th1系免疫に関わるサイトカインのレセプター及びそのシグナルを伝達する転写因子(IFN-γR1,IFN-γR2,IL-12Rβ1,IL-12Rβ2,IL-18,STAT1,STAT4)ならびに自然免疫、殺菌に関わる遺伝子(TLR2,TLR4,SFTPA1,SFTPD,NRAMP1)を選択した。それぞれの遺伝子内に存在するSNPとの間で相互に強い連鎖不平衡にあるマイクロサテライトマーカーを用いた結果、二つの遺伝子において、症例と対照で、対立遺伝子頻度が補正P値により有意差を認めた。ゲノムワイドアプローチについては、多施設共同研究により、本年度、非定型抗酸菌症に関する一次スクリーニングを開始した。この方法を用いて、非定型抗酸菌症の疾患感受性遺伝子が迅速に同定できるものと期待される。
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