研究概要 |
イギリスの新しいAレベル物理コース「アドバンシング物理」を日本の高校と大学の物理教育の中で活かすために,複数の高校と大学をつなぐ新しい高大連携を構築し,継続的な研究会活動を行う中で,公開授業を核とした実践的な研究を行った。平成15年度には,IT機器を効果的に活用して力学を学習する「第9章:次の運動を予測する(力学)」,平成16年度には,現代の科学技術を支えているディジタル技術や情報の伝達と物理学との関係を扱う「第1章:イメージング,第3章:シグナリング(画像処理,信号の伝達)」を研究テーマとして取り上げ,各年度の8月中旬に高校生,大学生を対象とした3日および2日間の公開授業を行った。さらに,上記以外の「第15章:電磁機械(電磁気学)」「第13,14章:物質(熱力学)」についても,毎月1回開催する研究会の中で実践的に検討を行った。以上の研究活動の成果をまとめると概ね以下のようになる。 1)高校生,大学生を対象とした公開授業の形で実践することによって,このカリキュラムが日本においても生徒や学生を引きつけるものであることを明らかにした。 2)大学と高校の教員が年間を通じて継続的な研究会を行うことにより,大学教員が高校のカリキュラムを理解し,その変革の作業を共同で行う意義が明らかになった。 3)科研費により,実験器具やソフトウェアを1クラスで授業可能な規模で揃え,高校への貸し出し体制を作ったことにより,高校現場での経験の蓄積が飛躍的に促進され,高校教員の協力にもとづく新しい高校物理カリキュラムの実践的研究の道が開かれた。 4)イギリス型の授業運営とりわけ探究実験の指導などについて公開授業を通して実地に経験し,共同で検討する機会を持って,各校での授業に生かすための研修の場とすることができた。これによって,教員養成大学・学部を核とする高大連携による現職高校教員研修の新しい可能性を開いた。
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