研究概要 |
本研究では,平成16年度は,日米の幼年児向け科学学習カリキュラムにおける内容の学年配当や教材配列の分析を中心に行った。日本の小学校学習指導要領と全米科学教育スタンダードや理科教科書を比較したところ,両国間で学年配当や教材配列に大きな違いが見られた。例えば,重力やエネルギーといった日本では中学校段階で導入される科学概念がアメリカではすでに幼年児段階で紹介されていた。実際の使い方に違いがあるとはいえ,小額3年生向けの日本の理科教科書の総ページ数は,米国のものの約1/6であった。科学教育を幼児教育の中心に据えた米国のサイエンス・スタートや,プロジェクトを実践の中心に据えたイタリアのレッジョ・エミリアのように興味深い実践例も見られた。 諸外国の幼年児向け科学学習カリキュラムで,主に3歳から8歳までの子どもを対象とした組織的な取り組みで特に興味深いものとして,米国のプロジェクト・スペクトラムが抽出され,日本の小学校理科学習指導要領と詳細な比較が行われた。 今回分析を行った同年齢段階の子ども向けの諸外国の科学学習カリキュラムの到達点から考えると,我が国において幼年児の科学学習コンピテンスをいっそう高めるような科学教育は十分に可能であろう。求められるべきなのは,子どもの自発的な活動に基づきながら,しかも同時に子どもの科学学習可能性を高めていくにはどうしたらよいのかという発想である。幼年児特有の統合的な遊びや,生活の中の自然環境を通しての学び,他者との共同による学びとして,プロジェクト型の活動は大きな意味を持っていると思われた。
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