研究概要 |
児童生徒の数理的社会認識発達の諸段階を未分化総合的,体験反省的,記号操作的と仮定し,それぞれに対応する形で日米交流学習,ゲーミング・シミュレーション,GISを取り入れた学習を組織し実践した。その結果,社会科において数理教育を実践するには,能動的な学習活動,コミュニケーションのある社会的学習,思考実験のできる柔軟な教材構成が重要であることが分かった。また数理的思考の発生機序の解明が課題として浮上した。 平成16年度は,前年度の予備実践で提起された学習方法の改善を取り入れた授業プランを開発し,実践・評価を行った。授業開発方針はこれまでのものを踏襲し,小学校では日米交流学習を取り入れ総合的な文脈で行う学習,中学校ではゲーミング・シミュレーションの手法を取り入れた学習とGISを活用した地域問題解決学習を組織した。 特に、中学校において実践したシミュレーションゲームによる授業では、生徒は、意思決定の文脈で生きて働く形で数理的な概念を形成し、社会を捉える数理的モデルを築き上げていることが学習記録の客観的な分析で明らかになった。一方、生徒と教師・参観者の両者によるアンケート調査では、シミュレーションゲームを用いた学習に対する評価が極めて高く、授業への積極的な導入が望まれていることが明らかになった。 このように、生徒は社会的事象との応答関係の中から社会を認識するための数理的モデルを構築しており、従来の社会科授業で教えていた事実的知識や概念的知識とは違った種類の新しい知識を形成している。この種の知識の育成こそが新世紀社会科に要請される任務であり、課題である。今後、われわれはシミュレーションゲームを主軸に、この課題に応えていく。
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