研究概要 |
算数・数学教育の内容とその配列に関する要因について,その要因に大きく関わる6層の人々の意見を2年間にわたって調査した。その結果,数学の価値や系統性という要因(数学価値調査)については,数学者約300名,小中学校の教師約1900名,数学教育担当指導主事約160名,数学教育研究者約50名から回答を得て,社会の算数・数学に対する必要性という要因(数学社会調査)については,小中高校の保護者約1800名,研究者約400名から回答を得ることができた。 これらの調査の主な結果は,次の通りである。 算数・数学の内容の重要性については,全体的に肯定率が高いのは,計算,比・比例,統計の内容である。例えば,次の通りである。整数・小数・分数とその計算,割合や比例・反比例とその使い方,グラフや表,データの傾向など。数学価値調査の対象者は,数学社会調査の対象者よりも,より多くの算数・数学の内容を重要としている。 算数・数学の能力や技能の重要性については,全体的に見ると,数学価値調査の対象者,保護者,研究者の3グループに分かれる。数学価値調査の対象者は多くの能力や技能を重要としているが,保護者は計算能力を重要とし,研究者は表やグラフを扱う能力を重要としている。保護者,研究者,小学校教師は,コンピュータを使うことも重要としている。 算数・数学の学習を通して育てられると考えられている姿勢や態度の重要性については,全体的に見ると,5つのグループに分かれる。多くの姿勢や態度を重要だとする指導主事・数学教育研究者グループ,考えることや楽しむことを重要だとする教師グループ,考えることを重要だとする数学者グループ,考えることや説明することが重要だとする研究者グループ,楽しむことや根気強く考えることが重要だとする保護者グループである。算数・数学の姿勢や態度については,多様である。
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