研究概要 |
1.平成16年度は,数学教育における創造性育成に関して,問題解決や論理的思考などの形式陶冶的側面を重視する国,それとは対極的に,数学の実世界への応用など実質陶冶的側面を重視する国の数学教育の政策の背景や実情について調査を行うことを主なねらいとした。文献調査に加えて次の機関に対し現地調査を行った。 【ハンガリー】ファゼカシュギムナジウム,ファショル高等学校,ハンガリー国立教育研究所他【オランダ】フロイデンタール研究所,カールスカレッジ,ヤック・P・ティエッセカレッジカストリカム他,【フィンランド】ユバスキュラ大学教育研究所。 2.ハンガリーの教育制度は非中央集権的であるが,国家基本教育課程NATにより必修教育内容と,第4,6,8,10学年終了時に児童・生徒が到達すべき最低水準が定められている。数学は12年間必修教科とされる。数学優秀児のクラスが設定されているブタペスト市内のファゼカシュギムナジウムの数学の時間数は最低週8時間,指導内容は担当教師の自由裁量に委ねられている。(平成16年6月) 3.ハンガリー,中国大陸・台湾・香港・澳門,アメリカ・ユタ州,英国スコットランド,シンガポールの算数・数学教育における創造性育成について,日本科学教育学会年会で発表を行った。(平成16年8月) 4.ユトレヒト大学フロイデンタール研究所が主催となり、理科系以外の生徒むけの数学コンテストA-lympiadを全国的に行い,数学が実世界と関連すること,数学の問題に取り組むことの楽しさ,グループで活動することのよさを生徒に広めている。実世界との関連を持ち,解が一意に定まらない創造的な問題が毎年出題されている。(平成16年11-12月,及び,平成17年2月) 5.ユバスキュラ大学教育研究所によれば、フィンランドの数学カリキュラムは1980年代以降に数学の応用と問題解決を重視し,学習が遅れがちな生徒に対する特別指導がきちんとし,生徒は数学が仕事に役立つと考え,数学と理科の能力を促進させるためのLUMAプログラムを進行中である。(平成17年3月) 6.以上の結果を研究成果報告書「算数・数学教育における創造性の育成に関する政策とその実情の国際比較研究」(2005年、139ページ)としてまとめた。
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