研究概要 |
転座型白血病細胞の新規転座関連遺伝子を単離して、その遺伝子の発生と分化における役割およびキメラ遺伝子の標的遺伝子を検索した。我々はこれまで11q23転座型白血病のMLL遺伝子の相手遺伝子をCBP, P300,ABI1,AF5q31など8種単離した。今年度は転座型急性リンパ性白血病(ALL)の新鮮検体を用いて、転座の相手による発現の相違をDNAChipを用いて検索した。t(4;11)15検体、t(11,19)6検体、t(5;11)2検体および対照としてt(12;21)6検体、t(1;19)3検体をAffymetrix社のDNA Chip(12,600個)により発現プロファイルの解析を行った。t(4;11)とt(11;19)の両方に共通して発現がみられる遺伝子がFLT3,HOXA9,HOXA10等50種にみられた。MLL再構成のある21検体中予後による発現パターンの相違がみられ(P=0.01)、転写因子のCBF2遺伝子が予後良好群で、CDP遺伝子が予後不良群で高発現を示した。また21例で共通して発現が高かったFLT3遺伝子の変異を調べたところ、乳児ALL 44例中8例(18%)で変異がみられた。また小児ALL 112例では、高2倍体ALL 19例中4例(21.5%)に変異がみられたが、TEL-AML1、E2A-PBX1、BCR-ABL例では変異はみられなかった。これらの遺伝子の発現を定量reverse transcriptase(RT)-PCRでチェックしたところ、ほぼアレイの発現と一致していた。これらの遺伝子を詳細に検討し、共通する下流遺伝子をしぼる作業を進めている。現在、昨年単離したMLL-SEPT6融合cDNAを導入した細胞をマウスに移植し、増殖や造腫瘍性の検討も行っている。
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