研究概要 |
本研究では、マウスの新しいMHCクラスI様分子群MILLの構造と機能を解明することを目的とした。MILL分子群に関しては、われわれのこれまでの研究により以下の点があきらかにされている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99: 13687,2002)。1)MILL分子には、MILL1,MILL2と名づけられた二つのメンバーが存在する。2)両分子ともMHC領域ではなく、第7染色体上のleukocyte receptor complex近傍でコードされている。3)既知のクラス1様分子の中で、MILLはヒトMHCでコードされるMICA・MICB分子と最も高い配列相似(アミノ酸レベルで約40%の相同性)を示す。4)MILLは正常組織にはほとんど発現されていないが、がん細胞株では高発現される傾向がある。上記の成果を踏まえて、本研究では、1)MILL分子の基本的な性状を解析すること、2)MILL分子と相互作用する分子を同定すること、を主要な具体的目標とした。主な研究成果は以下のとおりである。1)MILLクラスI分子はMICA/B分子と最も近縁なクラスI分子であるが、MICA/B分子とは異なったクラスI分子であり、NKG2Dとの結合能をもたない。2)MILL分子はベータ2ミクログロブリンと会合する可能性が高い。3)MILL分子は、TAP欠損株においても細胞表面に発現されるので、ペプチド結合以外の機能を有する可能性が高い。4)MILL遺伝子族はげっ歯類のほかにウマにも存在するが、ヒトには存在しない。本遺伝子族はもともとヒトにも存在したが、2次的に失われたものと推定される。
|