研究概要 |
1.種々のマウスにH.pyloriを感染させたところ、胃炎はC57Black,B6,Balb/cの順に著明であった。一方胸腺摘出したマウスでは、C57Blackの胃炎は軽減し、逆にBalb/cでは著明なBリンパ球浸潤とともにMALTリンパ腫の発症が見られた。さらにC57BlackにEnteric helminthを感染させたところ胃炎は軽減した。またγδT細胞欠損、IFNγ欠損マウスにおいても胃炎は抑制された。さらにIL7の発現はIFNγ欠損マウスでは著明に抑制され、γδT細胞数も減少していた。さらに抗IL7受容体抗体の投与によってもγδT細胞の浸潤は著減した。なおこれらのマウスでは上皮細胞のBrDUの取込みが減少していたが、これらのマウスにγδT細胞を導入するとBrDUの取込みが快復した。 2.H.pylori感染マウスのreg遺伝子、REG蛋白を検討したところ、胃炎の程度に比例して上皮細胞のREG蛋白の発現が増強していた。またこの発現抗IL7受容体抗体の投与により抑制された。 3.ヒト胃癌細胞株IL7を投与したところ、強い増殖反応が観察された。さらにIL7はこれらの細胞のreg遺伝子発現を増強し、かつレポーター活性を増強した。 4.REG蛋白の投与によってヒト胃癌細胞株の増殖が促進された。その際REG蛋白は抗アポトーシス作用を発揮すると同時にNF-kB活性を増強した。 5.ΓδT細胞およびγδT細胞上清をヒトガン細胞株に投与したところ、細胞増殖が促進された。その際種々の抗サイトカイン抗体を投与したが、その増殖効果は抑制されなかった。 6.以上より、H.pylori胃炎ではTh1反応によるIFNγ産生がIL7を誘導し、これがγδT細胞浸潤を増強させると同時に、上皮細胞のreg遺伝子発現を増強させて、上皮の増殖を促進させる可能性が示唆された。
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