研究概要 |
概要 癌遺伝子Wntはbeta-cateninを細胞接着安定因子から転写促進因子へ変換させる新たな癌化シグナル伝達分子として注目を集めている(Peifer & Polakis.Science 2000)。我々は臨床検体より癌組織特異的に発現する新規WntレセプターFzE3遺伝子をクローニングし(GenBank登録AB010881)、その高発現によりbeta-cateninの核内移行が促進することを証明した(Tanaka et al.Proc Natl Acad Sci USA1998)。次に申請者は平成12年度及び平成13年度特定研究(C)/研究代表によりWnt/FzE3シグナルに因って誘導される新規遺伝子Wnt-inducible signaling pathway 1 variant(WISP1v)をクローニングし(GenBank登録AB034122)、WISP1vが形質転換能、細胞浸潤亢進能を持つ癌遺伝子であること、癌組織で特異的に高発現することを報告した(Tanaka et al.Oncogene 2001)。平成14年度特定領域研究/研究代表により、癌組織におけるWISPファミリーの解析から新規遺伝子WISP3 variant(WISP3v)をクローニングし(GenBank登録AB075040)、WISP3蛋白翻訳領域のA9領域がA8となりフレームシフトを起こすこと、マイクロサテライト不安定性に関連することを報告した(Tanaka et al.Gastroenterology 2002)。さらにWntシグナル抑制分子Dickkopf(Dkk)-2,2b,3(Gen:Bank登録:AB033208,AB033941,AB033421)、Dkk結合分子Kremen2,2a,2b,2c(GenBank登録:AB086355,AB086356,AB086357,AB086405)をクローニングした。本年度の研究では、WISP1vによって細胞内のp42/p44 MAPK,p38 MAPK活性が亢進し、p38 MAPKが細胞浸潤能を促進させることを明らかとした(Tanaka et al.Hepatology 2003)。また、WISP3は細胞浸潤抑制作用を持つが、WISP3vではこの抑制作用を失っており、loss of function mutationであることを示した(Tanaka et al.Gastroenterology 2003)。さらに、Dkk-1の発現低下と腹膜播種と関連することが見い出し、現在その解析を進めている。
|