研究概要 |
トポイソメラーゼI(Topo I)のカンプトテシン(CPT)によるSUMO化、引き続き起こる局在変化に対する核小体SUMOプロテアーゼSMT3IP1,3の関与を検討した。培養細胞へTopo Iと各種SUMOプロテアーゼを過剰発現させ、CPTによるTopo IのSUMO化と細胞内局在変化を調べた。その結果、SMT3IP1,3ともにSUMO化を抑制せず、局在にも影響を与えなかった。一方、他のSUMOプロテアーゼであるSENP1,SMT3IP2,SENP2によってSUMO化は抑制されたが、CPTによる核全体への移行には影響は見られなかった。以上の結果はTopoIのSUMO化は核小体からの移行に必須であるが、移行後、核全体に局在するのには重要ではないと考えられた。次にp53の持つ転写活性能へSUMO化が与える影響を検討した。H1299細胞またはHeLa細胞へp53の標的遺伝子であるp21認識配列を組み入れたレポータープラスミド、p53発現プラスミドをトランスフェクションし、レポーターアッセイを行った。その結果、SUMO化部位変異体K386Rは野生型よりも2〜6倍高い転写活性能を示した。さらに野生型とともに各種SUMOプロテアーゼを共発現させたところSENP1,SENP2により転写活性の上昇がみられた。一方、p53のSUMO化を促進するSUMO E3リガーゼであるPIAS1をp53と共発現させると、p53の転写活性能は上昇した。しかし、K386Rにおいても野生型と同様にPIAS1による活性化が見られたため、PIAS1による活性化はp53のSUMO化を介したものではないと推測された。p53の転写活性能の制御においてPIAS1はSUMO E3リガーゼ活性を介したSUMO化促進による抑制作用と、p53自身のSUMO化とは無関係な促進作用の相反する二つの作用を示すと考えられた。
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