研究概要 |
減数分裂期では相同染色体どうしの交叉による組換えが一般的であり必須でもあるが,体細胞分裂期には組み換えは通常起こらない.逆に,体細胞分裂期での遺伝的組み換え機構を抑制することは染色体の安定性保持の観点からは必要であると考えられる.そこにはなんらかの抑制的制御が働いていると思われるが,現在に至るもその機構の端緒は見い出されていない.我々は,分裂酵母のユビキチン結合酵素E2(Ubc)の欠損による表現型を系統的に調べる過程で,その一つ,Ubc7の欠損した細胞では相同組み換えの頻度が劇的に上昇していることを見い出した.そのメカニズムを解明するためこの経路に働くユビキチンリガーゼを検索した.ユビキチンリガーゼの基本タイプのサブファミリーはCullinタンパク質(Cul)をコアにした複合体である.ヒト細胞に5種類存在するCullinファミリーのうち、分裂酵母には3種(cullin1,3,4)がホモログとして存在する.Cullin1リガーゼ(SCF複合体)以外の様態と機能は不明である.そこでCullin3,4の分裂酵母ホモログのPcu2,Pcu3遺伝子の機能を解析したところ、Pcu3欠損株で、Ubc7欠損株と同様に、重複配列間のポップアウト頻度が上昇し、紫外線とMMSに対して野性株よりも抵抗性を示した.これらの結果から、Ubc7とPcu3の相互作用の確認とともに、Ubc7/Pcu3が組換え抑制機能を有するE2/E3経路であると結論した.
|