研究概要 |
t(2;11)(q11;q23)を有する小児急性リンパ性白血病(ALL)においてAF4ファミリー遺伝子の一つであるLAF4がMLLと融合することを同定した。LAF4の切断点はAF4,AF5q31とほぼ同じ場所に存在し、MLL-AF4,MLL-AF5q31と類似のキメラ蛋白を形成すると考えられた。しかし、一方AF4とAF5q31はすべての病型の白血病細胞株で一様に発現していたが、LAF4はリンパ性白血病に比べて骨髄性白血病での発現頻度が低い傾向が見られ、LAF4は、AF4、AF5q31とは働きが異なる可能性が示唆された。MLL-AF4を発現する患者検体15例、ALL-AF5q31を発現する患者検体2例、MLL-ENLを発現する患者検体6例の遺伝子発現プロファイル解析を行ったところ、MLL-AF4,MLL-AF5q31、MLL-ENLの発現プロファイリングはいずれもよく似ており、TEL-AML1,E2A-PBX1とははつきり区別することが可能であった。特にMLL陽性ALLではFLT3,Meis1,CD44の発現が高かった。さらにMLL陽性ALLのみで2方向クラスター解析を行ってみると、転座相手遺伝子とは関係なく2つのクラスターに分かれ、様々な臨床データと比較検討したところ両者の間で予後が有意に異なることが明らかになった(P=0.01)。MLL陽性白血病細胞で発現の高かったFLT3の変異を検討したところ、MLL再構成を有する乳児ALLの18.2%という非常に高率にFLT3-D835/I836のミスセンス変異を見いだした。FLT3の変異を持ちMLL再構成を有するALL細胞株では、FLT3の高度のリン酸化がみられ、これにより下流の遺伝子が恒常的に活性化していると考えられ、これらの異常は白血病化におけるいわゆる"2nd hit"である可能性が示唆された。
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