研究概要 |
S期開始因子であるCdc6は、足場の有無に応じてタンパクレベルで発現の制御を受けており、これが足場依存的なG1/S期制御の最終ターゲット因子であろうと考えられる。Cdb6は、G2/M期そして休止期においてはユビキチン分解系による制御を受けている。一方、G1期におけるCdc6発現の消失は、プロテアソームの特異的な阻害剤であるラクタシスチンでは阻害すること出来ず、システインプロテアーゼファミリーの特異的阻害剤ALLNによって抑制することが出来る。このことからG1期におけるCdc6の発現制御は、ユビキチン系とは別にシステインプロテアーゼファミリーに属する酵素が行っているものと考えられた。我々はまず同ファミリーの中でもカルパイン類に着目し、Cdc6の分解活性のカルシウム依存性の有無を検討した。その結果、in vitroで合成したCdc6を基質とし、これに浮遊培養条件に移したNRK細胞抽出液(分解酵素が活性化している)と共に濃度を変えたEGTA、EDTAを加えた場合も、また逆にカルシウム濃度を上げた場合にもCdc6の分解活性に変化はなかった。このことからNRK細胞内で見られるCdc6の分解はカルシウム依存的なカルパイン類に依るものではないと結論付けられた。次に同ファミリーに属するカテプシン類について検討を開始した。カテプシンはリソソームプロテアーゼの総称であり、基質特異性などによってアルファベットで分類されている。多くのカテプシン類の中から最も可能性の高い酵素を選ぶため、細胞抽出液に種々の阻害剤を加えてCdc6の分解状態を検討した。その結果、シスタチンCによってCdc6の分解は効果的に抑制された。シスタチンCはカテプシンB,F,H,L,Sに対して特異的に作用する。別の阻害剤の実験によってカテプシンBの可能性も削除出来たことから、残るカテプシン類が候補因子となる可能性が高いと考えられた。実際、この中の市販の精製タンパクが存在する幾つかは、in vitroでCdc6と直接反応させる実験においても、分解活性を持つことが確認された。
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