研究概要 |
本研究は、低分子量Gタンパク質、Rhoファミリーの細胞、組織における局在の信頼性高い解析を可能にする、特異抗体、固定法を確立し、それを利用して、形態形成時におけるRhoファミリータンパク質の正確な挙動、各組織における局在の情報から機能との関連を探り、がん化にともなう変化の有無を調べることを目的としている。本年度は、Rhoに関しての基礎的な研究が終了し、Rac,Cdc42に関しては足がかりができた。 1 すでに確立した抗体(RhoA特異的なものとRhoA,RhoCに特異的なもの)、固定法を用いて、各組織における局在の詳細を決定した。また、培養細胞を用いて、Rhoの活性化時にRhoの細胞質から細胞膜への移行を明瞭に可視化することができた。また、細胞周期を通じてのRhoの局在変化を詳細に解析した。その結果細胞質分裂時の分裂面決定の時期に、Rhoが分裂溝域に濃縮することがわかった。この濃縮は、分裂面決定に必要な微小管に依存しており、またRhoの活性が細胞質分裂に必要であるという報告と考え合わせると、Rhoの濃縮は分裂面決定における重要なステップであると考えられた。RhoA,B,Cそれぞれに特異的な抗体の作製を試みているが、ウェスタンブロット、免疫染色が共に可能な抗体の作製は今のところ成功していない。 2 Rac,Cdc42に関しては、市販されている抗体の中に、ウェスタンブロット、免疫染色が共に可能な抗体があることが判明した。また、そのために必要な固定条件も決定することができた。しかし、Rhoと比較すると、培養細胞、ほ乳類組織などで特徴的な分布を示さなかった。非常にドラスティックな形態形成運動が起こる、胚発生に焦点を当てて、局在を検討したところ、上皮の管形成時にはその頂端部に強い濃縮が見られ、現在、その場所での機能を解析している。
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