研究概要 |
本研究では,RNA干渉(RNAi)をがん遺伝子治療法として開発するための基礎研究として4-thioRNAによるRNAi効果を系統的に検討し,modification-activity相関を明らかにしin vivoでの使用可能な修飾siRNAの開発を目差す.平成15年度の研究において申請者はまず,様々な修飾に対応できる4'-チオリボヌクレオシドユニットの合成を完了した.続いて得られたヌクレオシドユニットを用いてpGL2ルシフェラーゼ遺伝子をターゲットとした各種修飾RNA (4'-thioRNA)を化学的に合成し,modification-activity相関を検討した.ウリジンユニットの修飾(19残基中5残基)ではセンス,アンチセンスさらに両鎖の修飾に対して許容であった.それに対してシチジンユニットの修飾(19残基中5残基)では修飾数が同じであるにも関わらず,両鎖の修飾においてRNAi効果が全く観察されなかった.これにより修飾体の導入部位もRNAi効果に極めて重要であることが明らかになった.さらに修飾数を増やしてゆくと(19残基中10残基および全修飾)効果は減少し,特にアンチセンス鎖の修飾でその現象は顕著に観察された.siRNAによるRNAi効果の発現には5'末端のリン酸化にはじまりヘリケースによる2本鎖の解離,続くRISC形成など非常に複雑な経路を必要とする.そこで検討したsiRNA数種について5'末端をリン酸化したものについてもRNAi効果を評価した.その結果,RNAi効果の増強,回復は見られず5'末端のリン酸化が重要なステップではないことが示された.続いてヘリケースによる2本鎖の解離の重要性を考察する目的で2本鎖RNAの熱的安定性を測定した.その結果,修飾数に比例して2本鎖RNAは熱的に安定になることが明らかとなり,RNAi効果の減少の原因の一つとして2本鎖RNAの熱的安定性が関わっていることが示された.これについては現在,ミスマッチ配列を導入することにより,より詳細な考察を行うための実験を行っている. 現在,核酸医薬品として臨床使用されているものにアンチセンス核酸がある.この核酸分子ではgapmerと呼ばれる修飾法が一般に用いられている.そこでsiRNA分子についてもその修飾法を検討した.すなわち3'末端および5'末端6残基を修飾体とし,切断部位と予想される中央7残基を天然型とした各種siRNAを合成した.これらについても現在,RNAi効果ならびに効果の持続性の両面について検討中である.
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