研究概要 |
マウス急性GVHDモデルを用いて腸管GVHDの発症機序を解析した.ドナーCD8T細胞はGVHD早期にパイエル板,脾臓,リンパ節等の2次リンパ組織で増殖,エフェクター/メモリータープに分化し,GVHD後期において急激に腸管浸潤を開始することが明らかとなった.ドナーCD8 T細胞の腸管浸潤に伴い,陰窩部上皮細胞のアポトーシスが誘導されたことから,腸管GVHDの発症にドナーCD8 T細胞の浸潤が重要な役割を果たすことが示唆された.腸管に浸潤したドナーCD8 T細胞ではケモカインレセプターCX_3CR1,CXCR6及び腸管指向性接着因子α4β7インテグリンの発現が上昇しており,またそれぞれのリガンドであるFractal kine, CXCL16及びMAdCAM-1の腸管組織における発現を認めたことから、中和抗体を用いてドナーCD8 T細胞の腸管浸潤及び腸管GVHDの発症におけるこれらの分子の関与を検討した.抗Fractalkine抗体,抗MAdCAM-1抗体をGVHD後期に投与する事により,ドナーCD8 T細胞の腸管浸潤及び腸管上皮細胞のアポトーシスが有意に減少し,一方で脾臓,リンパ節,肝臓におけるドナーCD8 T細胞数に有意な差を認めなかった事から,CX_3CR1-Fractalkine及びα4β7-MAdCAM-1の相互作用を阻害する事により腸管GVHDを選択的に軽減できる事が明らかとなった.次に抗Fractalkine抗体及び抗MAdCAM-1抗体投与がGVL効果に及ぼす影響を検討した.腫瘍細胞P815(H2-d)をBDF1マウスに移入し,1日後にB6マウス脾細胞を移入したところ,コントロールとしたBDF1脾細胞移入群に比較し有意な生存延長を示し,このGVL効果は抗Fractalkine抗体及び抗MAdCAM-1抗体投与により腸管GVHDを軽減した群においても保存されていた.
|