多くのアポトーシスはミトコンドリアの膜透過性亢進現象を起点として誘導されることから、ミトコンドリア膜透過性亢進機構を解明し、それを分子標的とした創薬は有用である。そこで本研究では、1)ミトコンドリア膜透過性亢進に関与する分子を網羅的にスクリーニングする、2)その知見を、基た抗アポトーシス薬を開発する、ことを目的とした。我々は、単離ミトコンドリアを用いてミトコンドリア膜透過性の多寡を測定するin vitro assay系を確立している。この系に、(1)肝ミトコンドリアの外膜成分に対するモノクローナル抗体のライブラリー(4000 クローン)、(2)低分子化合物のライブラリー、を添加し、膜透過性を安定化する抗体あるいは低分子化合物を探索した。その結果、数種類の抗体と1種類の低分子化合物を見いだした。これらの抗体や化合物は細胞レベルの実験において、確かにアポトーシスに対する影響を発揮した。現在、これらの抗体や低分子化合物の標的分子(この分子はアポトーシス実行に重要なミトコンドリア分子であると考えられる)の同定を行っているところである。また、この低分子化合物に関しては、個体レベルのアポトーシスにおいて抑制機能を発揮するか検討していく予定である。また、最近我々はBcl-2ファミリー蛋白質に特異的に結合する低分子化合物を見出しており、この分子の立体構造をもとに、アポトーシス促進型Bcl-2ファミリー蛋白質にのみ結合する分子をコンピューター上でデザインし、抗アポトーシス薬の開発を行う。
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