研究概要 |
我々が発見した以下の新事実を元にして新たな癌自然転移阻害薬の開発を行ってきた。(1)マウス・メラノーマBL6に高い自然転移能をもたらす原因遺伝子はコネキシン26である。(2)コネキシン一般の阻害剤として知られているオレアミドが弱いながら(34%)もマウス・メラノーマBL6に自然転移を阻害する。今年度はより効率の良い薬剤開発のために新たなin vitroアッセイシステムの開発を試みた。今回はヒトのコネキシン26のみならず、コネキシン32,-37,-40,-43,-45を恒常的に発現している細胞株を作製し、顕微鏡下で蛍光色素を微小なガラス針を用いて注入し、その後の蛍光色素の拡散を経時的に測定するというアッセイシステムを設定した。これによって迅速にコネキシシ26に対して選択的に阻害する薬剤が合成できているかどうかを判定できる。薬剤開発においてはコネキシン26を強く阻害するが心臓のパルスに影響を与えるコネキシン40,-43,-45、はほとんど阻害しないという選択的な阻害活性を持つ薬剤の合成を心がけてきた。これまでに開発してきたMI-18,MI-22はマウスの腹腔内投与によってコネキシン26を選択的に阻害するのみでなく、BL6の自然転移を15%、22%という高い効率で阻害した。経口投与による実験では胃液によって壊されるせいか自然転移は全く阻害されなかった。さらにMI-18やMI-22よりコネキシン26を選択的に阻害する薬剤の開発にも成功した。また、MI-18がBL6のみでなく、ヒトの大腸癌細胞株のマウスにおける自然転移をも効率良く阻害薬することも新たに発見した。興味深いことにオレアミドの溶剤として用いたオリーブ油などの蒸留分画が経口投与においてもオレアミド程度のBL6の自然転移を抑制した。これはこの蒸留分画が癌転移の健康食品として応用できる可能性を示唆する。
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