研究概要 |
serial analysis of gene expression(SAGE)法を用いて組織型や悪性度の異なる5種類の胃癌組織の遺伝子発現を解析し、38,903個のユニークtagを含む137,706発現tagを同定した(GEO accession number:GSE545)。胃癌特異的発現遺伝子の抽出のため、胃癌libraryと正常胃粘膜との比較から、特に発現の異なる128tagについてクラスター解析を行い、すべての胃癌で共通して発現が亢進している15tagを抽出した。これらに対応する16遺伝子の発現を定量的RT-PCRで検討したところ、APOC1,CEACAM6,YF13H12が、半数以上の胃癌において過剰発現していた。また、SAGE database中の15種類の正常組織libraryで発現がなく、胃癌では発現している遺伝子を約60個抽出し、RT-PCR法で発現を検討したところ、少なくとも4個の新規胃癌特異的発現遺伝子が見い出された。さらに、早期癌と進行癌、原発巣と転移巣から得られたSAGE libraryの比較から、FUS,CDH17,COL1A1,COL1A2,APOEが悪性度と相関することが確認された。SAGE法で抽出された遺伝子に、胃癌の発生・進展に関する既知の遺伝子、薬剤感受性のマーカー遺伝子を合わせた475遺伝子について、SAGE databaseを基にクラスター解析を行ったところ、胃癌と他の癌との判別ができ、さらに、胃癌の種類や悪性度に対応する遺伝子群が同定できた。これをもとに胃癌の病態解析、遺伝子診断用のカスタムアレイEx-STOMACHIPを作成した。今後、多数の臨床例を対象に発現解析を行い、発癌リスク、進展、予後情報との関連を臨床疫学的に検討する予定である。尚、食道癌については、現在、SAGE法により遺伝子発現プロファイルを解析中である。
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