研究概要 |
キュウリhRdRP遺伝子の全塩基配列を決定し,この遺伝子はトマト,タバコ,A.thalianaの各種hRdRPと60-70%の相同性を示すことが明らかとなった.また,タバコ,ササゲhRdRP遺伝子については3'末端側約半分のcDNAクローンを取得し,塩基配列決定を行った.さらに,in situハイブリダイゼーションを始め転写レベルでのhRdRP遺伝子発現誘導動態解析を行うために,ササゲhRdRP遺伝子cDNAクローンから非放射性プローブを調製した. 次に,既に精製法が確立しているタバコのhRdRPをCMV感染葉から部分純化後,CMV RNAを鋳型に用いてin vitroにおける基質の取り込み活性を測定した.その結果,CMV各系統共にタバコに対してhRdRP活性を誘導することが認められた. さらに,ウイルス感染によるササゲhRdRPの発現誘導動態ならびに植物ウイルス間の干渉効果の機構を分子レベルで解明することを目的として,異なるサブグループに属するCMVの感染性cDNAクローンを用い,ササゲ(品種 黒種三尺,PI189375)におけるウイルス間の感染増殖に関する競合について転写レベルでの解析を行った.これまでの各種接種試験の結果,ササゲの接種葉,非接種上位葉組織内におけるCMVサブグループ間の競合が明らかとなった.比較のためにタバコでも接種試験を行ったところ,同様にCMVサブグループ間の競合が示された.また,CMVとPeanut stunt virusを用いてN.benthamianaに対し同時混合接種試験ならびに干渉効果試験を行ったところ,CMVの移行増殖が優位に推移することが示され,ククモウイルス間のレベルでもウイルスの移行増殖に関する競合が生じることが判明した.ササゲにおけるCMV RNA蓄積とhRdRP発現誘導に関する動態解析を各種ハイブリダイゼーション法により行った結果,接種葉においてはCMVの増殖量に比例してhRdRP mRNAが蓄積すること,さらにウイルスが移行増殖している部位ではhRdRP遺伝子のmRNA蓄積レベルが上昇することが示唆された.これらの結果から,hRdRP遺伝子の発現誘導はウイルス増殖部位における宿主のウイルス抵抗性分子機構と何らかの因果関係を持つ可能件が示された.
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