研究課題/領域番号 |
15029231
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
姜 英男 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (50177755)
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研究分担者 |
小林 真之 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 講師 (00300830)
齋藤 充 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (50347770)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
6,400千円 (直接経費: 6,400千円)
2004年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2003年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
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キーワード | 大脳皮質 / 機能円柱 / 局所回路 / 錐体細胞 / GABA_A受容体 / バレル野 / 島皮質 / 側方抑制 / GABA_B受容体 / カラム内抑制 / カラム間抑制 |
研究概要 |
大脳皮質の体性感覚野及び視覚野においてよく知られている機能円柱構造は、感覚情報処理における基本的な機能単位として考えられている。円柱構造の最も顕著な例の一つは齧歯類一次体性感覚野内のバレル野である。バレル野第IV層には、特有の樽状つまりバレル構造が見られ、髭1本1本からの入力に対応して円柱が存在することが知られている。対照的に、第一次味覚野を含む島皮質においては、円柱構造が存在するか否かは未だ明らかではない。本研究では、島皮質における円柱構造の存在の可能性を検証すべく、島皮質とバレル野での興奮伝播様式にどの様な時間的・空間的差異が認められるかを明らかにするため、膜電位感受性色素を負荷した幼若ラット大脳皮質スライス標本を用い、第IV層に短パルス微小電気刺激を与え、興奮伝播の様子を光学的膜電位測定によって観察した。 島皮質においても、バレル野とほぼ同様に、先ず第IV層より上方及び下方へと興奮が垂直伝播し、II/III層に達した興奮はそこから隣接する左右両側のカラムへと水平伝播した。このことから、島皮質における機能円柱の存在が示唆された。 標準細胞外液灌流下で両皮質の興奮伝播を比較すると、バレル野は島皮質に比べ第II/III層のより表層へと興奮が到達しており、第II/III層における興奮の水平伝播の範囲及び強度も大きかった。GABA作動性抑制ニューロンの作用を検証するため、GABA_A受容体拮抗薬bicuculline 50μMを灌流投与し、興奮伝播パタンに対する影響を観察した。バレル野では、bicuculline非投与時に比べ興奮強度は上昇し、水平及び垂直的な伝播範囲が拡大し、興奮の時間経過も大幅に延長した。しかし、島皮質ではbicuculline投与による水平伝播範囲の拡大が顕著ではなかった。これらの所見から、バレル野と島皮質において、GABA作動性抑制性ニュー一ロンによる興奮伝播の制御様式に差異があること、及び、錐体細胞の軸索の広がりに差があることが示唆された。そこで、両皮質の第II/III層錐体細胞に色素を注入し形態を観察したところ、バレル野では水平方向へ広範囲に広がる軸索を持つのに対し、島皮質細胞の軸索の水平的な広がりは小さいことが明らかとなった。 以上の結果から、バレル野では第II/III層錐体細胞の軸索が水平方向に広く伸びており、水平的な興奮伝播を制御するために、側方抑制機構が存在していること、一方、島皮質では軸索の水平的な広がりに乏しく、側方抑制機構の働きも小さい可能性が示唆された。
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