研究課題
特定領域研究
神経細胞の軸策伸長部位と伸長方向の決定機構を解明することを目指して、我々の開発した細胞内1分子可視化計測などの手法を使い、細胞膜に存在する神経成長因子(nerve growth factor ; NGF)受容体とNGFの結合解離反応、受容体の動態を可視化解析した。NGFは、神経細胞の分化、維持、軸策伸長、ガイダンスなどの作用を持つことが知られている。NGFの蛍光標識法を確立し、ニワトリ後根神経節細胞の単一成長円錐におけるNGF-受容体複合体の分子運動、NGFの結合解離反応、成長円錐の伸展を引き起こす分子数を決定した。ひとつの成長円錐には約160個の高親和性結合部位(解離定数35pM)と約620個の低親和性結合部位(解離定数7.7nM)が存在し、成長円錐の進展運動は、成長円錐あたり40分子のNGF結合で開始されることを明らかにした。また、高親和性部位の結合速度(2.8x10^7/M/s)と解離速度(8.2x10^4/s)を決定した。成長円錐の受容体と複合体を形成したNGFは、最初ランダムな熱拡散運動を行っているが、やがて約20%の複合体が微小線維に依存した後退性の輸送運動を始め、成長円錐基部から細胞内に取り込まれることがわかった。また、NGFによって神経細胞様の形態に分化するPC12細胞でNGF-受容体複合体の1分子動態計測を行った。細胞膜に結合したNGF分子は、後根神経節細胞の成長円錐におけると同様にランダムな拡散運動を行うが、数秒に一度、運動が停滞することがわかった。拡散と停滞は確率的に起こる現象であり、各々の運動モードの時定数は1.6sと0.3sであった。NGF受容体のひとつTrkAのNGF依存的な自己リン酸化反応の阻害剤k252aを加えると、拡散運動の時間が相対的に長くなり、停滞を示す運動軌跡が減少する。また、停滞時にNGF/受容体複合体が集合することがあり、さらに受容体下流の情報伝達分子Rafと受容体の共局在は停滞時に起こることから、運動の停滞は情報伝達複合体の形成によると考えられる。
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