研究課題
特定領域研究
マウス体性感覚野第4層には、バレルとよばれる特殊な、組織学的構造が存在するが、その形成は活動依存的回路発達のモデルとして注目されてきた。しかし、その分子レベルの機構は、方法論的な不備のため、ほとんど未解明である。本研究では、私達が開発した大脳皮質特異的遺伝子欠損システムを用いて、バレル形成の分子機構を明らかにすることを目標としてきた。本研究では、アデニル酸シクラーゼ1の遺伝子を2個のloxPで挟んだ構造のゲノムをもつfloxマウスを作製した。まず、Cre組換え酵素を受精卵で発現されることにより、全身の全細胞で遺伝子を欠損させたところ、マウスは正常に育ち、子孫を残すことができた。しかし、バレルは形成されず、視床のバレロイドにも一部異常が見られた。次いで、floxマウスと、先に開発したEmx1-Creマウスを交配することにより、大脳皮質の興奮性神経細胞特異的にアデニル酸シクラーゼ1をノックアウトした。このマウスは正常に成体まで育った。また、その脳ではバレル、バレロイドとも正常に形成されていた。さらに、大脳皮質興奮性神経細胞とともに視床VB核の一部の細胞でノックアウトの起きている系統を作製し、その解析をおこなった。その結果、バレロイドは正常であるが、バレルには部分的な異常がみられた。これらの結果を総合すると、バレル形成には大脳皮質興奮性神経細胞のアデニル酸シクラーゼ1は必要ないことが示される。また、視床-皮質軸索終末のアデニル酸シクラーゼ1がバレル形成に重要な働きをすることが示唆される。
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Genesis 38
ページ: 130-138
Development 131
ページ: 1825-1833