研究課題
特定領域研究
出芽酵母や分裂酵母といった単細胞生物は、mRNA核外輸送因子Tapに相同性を示す遺伝子として単一の遺伝子(MEX67およびSpMEX67)のみを持つのに対し、線虫やショウジョウバエ、ヒトなどの多細胞生物のゲノムには、Tapに相同性を示す複数の遺伝子群(Nuclear Export Factor : NXFファミリー遺伝子と総称される)が存在する。高等真核生物においてTap関連遺伝子が複数存在する生理的意味を明らかにするために、マウスTap (mTap)および3種類のマウスNXFファミリー遺伝子産物、mNXF2、mNXF3、mNXFaのcDNAをクローニングするとともに、それぞれの遺伝子構造、発現様式を解析した。その結果、mTapは常染色体にコードされ、調べた限りではすべての組織、臓器で発現が認められたのに対し、関連遺伝子産物はいずれもX染色体にコードされ、精巣、脳、胎児といった特定の臓器あるいは発生段階でのみ発現していることを見出した。さらにmTapおよびマウスNXFファミリー遺伝子産物の機能的な違いを明らかにするために、それぞれの遺伝子産物のmRNA核外輸送能、FG-リピートやp15への結合能、細胞内局在に関して検討した。mTapおよびmNXF2は、いずれもFG-リピートやp15に結合し、mRNA核外輸送トランスポーターとして機能したのに対し、mNXF3、mNXFaは、主として細胞質に局在し、mRNAの核外輸送活性を示さないことを見出した。これらのことから、マウスTap関連遺伝子産物は、(1)異なった組織、あるいは発生・分化の諸段階で、Tapとは異なった"特殊な"積み荷mRNAを積んで核外への輸送を行っている、(2)核外輸送以外にmRNA翻訳制御や分解など細胞質におけるmRNA代謝機構にも関与する可能性があると結論付け、成果を発表した。
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Genomics (印刷中)
Biochem.Biophys.Res.Commun. 321
ページ: 291-297