研究概要 |
SUMOはユビキチン類似の構造を持つタンパク質で、SUMOによる翻訳後修飾システムは細胞内、特に核タンパク質の機能変換を通じて、タンパク質の輸送・局在化・品質管理、そして最終的には、細胞核の機能発現に深く関わっていると推定されている。しかしながら、SUMO化がどのようにしてタンパク質相互作用に効果を及ぼすのかについては,十分明らかにされていない。本研究ではSUMO修飾に関連する因子の解析から、核内タンパク質の動態制御に迫ることを目的とし,以下のことを明らかにした。 1:SUMO化タンパク質に特異的に結合するタンパク質の検索:大腸菌体内でSUMOコンジュゲイトもしくはSUMOポリマーを大量に合成するシステムを完成させた。酵母2ハイブリッドシステムによりSUMO化タンパク質結合因子STIPsを複数同定し、大腸菌システムによるリコンビナントSUMO化タンパク質を用いて、相互作用の解析を行った。STIp1は核内シャペロンであり、STIP2はクロマチンタンパク質であった。これらのことから、SUMO化がSTIPとの相互作用を介してヘテロクロマチンの形成に関わるというモデルを考えた。 2:RanBP2のE3リガーゼドメインの解析をする:RanBP2のSUMO化E3リガーゼ活性を有する約200アミノ酸領域(IRドメイン)を同定し、そのE3活性はUbc9にアロステリック効果を及ぼすことによっているとを明らかにした。さらにこのドメインを解析し,アロステリック効果に必須の最小の領域にポリグルタミン酸配列が存在することを見いだした。 3:SUMO化TDGタンパク質の構造決:SUMO化TDGを大腸菌システムで大量に生産し、精製し、結晶化し、線解析を行うことで世界ではじめてSUMO化タンパク質の結晶構造を明らかにした。結晶解析は横浜市立大学の白川研究室との共同研究で行った。
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