研究概要 |
液晶の光配向制御は,液晶ディスプレイに代表されるオプトエレクトロニクスのアプリケーションにおいて非常に重要な次世代技術である。理想的には配向膜の光分解や化学反応が起こらないクリーンな製造プロセスが好ましい。また,製造プロセスの効率化を考えると,照射偏光に対して平行な液晶配向が望ましい。本研究では,照射偏光に液晶が平行配向するポリイミド配向膜の開発を目指して,光応答性ポリイミドの界面光反応を利用した新規液晶配向プロセスを開拓することを目的とした。 ポリイミド配向膜は,ポリアミド酸に350nmより長波長の偏光を照射しながら熱イミド化させることにより作製した。得られた配向膜は,液晶の一軸配向を容易に誘起できるだけでなく,従来の配向膜よりも熱安定性に優れていることがわかった。また,ポリイミドに偏光を照射する従来の手法で作製した配向膜を用いた場合は,液晶が照射偏光面に対して垂直に配向するのに対して,イミド化プロセスで光照射を行う本手法において作製した配向膜を用いた場合には,液晶が照射偏光面に対して平行に配向することを見いだした。さらに,p偏光を照射することで一回の光照射で液晶のプレチルト角を誘起できることが明らかとなった。 作製したポリイミド配向膜は偏光照射の光照射量,時間,温度およびアニーリング操作などの作製条件によって,液晶の配向方向が大きく異なることを見いだした。本研究で開発した手法は,従来の配向膜を用いた場合よりも,少ない光照射量で効率よく液晶を配向できることがわかった。イミド化温度が170℃以下では光照射偏光面に対して垂直方向に配向するのに対して,170℃以上では光照射偏光面と平行方向に配向することが明らかとなった。さらに,イミド化を200℃の高温で行うと従来の手法よりも高い配向性を有するポリイミド配向膜が得られた。以上のことよりイミド化条件を変えることにより液晶の配向方向を自在に制御可能であることが示唆された。
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