研究概要 |
d^<10>電子状態の典型金属イオン(Ga^<3+>,In^<3+>,Ge^<4+>,Sn^<4+>,Sb^<5+>)を含む金属酸化物にRuO_2を担持した場合に、水の光分解反応に対し水素と酸素を生成する安定な光触媒となることをこれまでに報告してきた。また、二つのd^<10>電子状態の典型金属イオンを含む複合型典型金属酸化物が単独型に比べ高い活性を示すことを見いだしてきた。これらの従来の典型金属酸化物光触媒は、主に1価のアルカリ金属イオンおよび2価のアルカリ土類金属イオンを含むが、本研究では、さらに2価のZnを加えた金属酸化物Ba_3Zn_2In_5O_<11>について、水の分解反応に対する光触媒作用を調べ、その効果を局所構造および電子構造から考察した。Ba_3Zn_2In_5O_<11>は、BaCO_3,ZnO,およびIn_2O_3,当モル比で混合した後1323〜1523K大気下で焼成し作製し、THF中でRu_3(CO)_<12>錯体を含浸担持した後、673Kで酸化処理することによりRuO_2担持光触媒とした。水の分解反応には、外部照射型反応石英セルを組み込んだ閉鎖循環型反応装置を用いた。1wt%RuO_2担持Ba_3Zn_2In_5O_<11>光触媒の活性は、水の分解反応の繰り返しにおいて,増加し安定な光触媒活性を示した。RuO_2担持MIn_2O_4(M=Ca、Sr)は,水の分解反に対して活性な光触媒作用を示すが、M=Baの場合には不活性であることが知られていたが、Znを加えることによってBa-In酸化物系においても,活性な光触媒となること見いだした。BaIn_2O_4とBa_3Zn_2In_5O_<11>の光吸収特性を比較すると、最大吸収となる波長は,後者が340nmほど長波長側に現れた。密度汎関数法の計算により、Ba_3Zn_2In_5O_<11>の価電子帯はO2p軌道であり,Zn3d軌道は,価電子帯の中央部に位置すること、および伝導帯はInの5s5p軌道にZnの4s4pが加わり、バンド分散が大きいことが示された。この大きいバンド分散は励起電子の移動度を高め、これが光触媒作用発現に関連することを明らかにした。また、Ba_3Zn_2In_5O_<11>では最大吸収を起こす波長が,BaIn_2O_4に比べ長波長側へシフトしたが,これは、O2p-Zn3d軌道間の反発により、価電子帯のO2p軌道が高い準位に押し上げられたことによることを明らかにした。
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