研究概要 |
酸化チタンの超親水性を利用すると,沸騰・凝縮などの相変化を伴う伝熱の促進を行なうことが可能である.本研究では,RFマグネトロンスパッタ法により銅管の表面に酸化チタンをコーティングした伝熱面を用いて,流下液膜とシリコンオイルとの熱交換試験を実施した. 伝熱管は直径22mm,長さ160mmの銅パイプであり,内側を所定の温度に設定された加熱用シリコンオイルが流れる.伝熱管は鏡面仕上げしたものと,RFマグネトロンスパッタリングによりTiO_2をコーティングしたものの2種類を使用した.スパッタ装置は回転機構を有しており,Ar/O_2の流量比を1:9に,全圧を0.3Paに設定して行った.スパッタは加熱無しで12時間,その後300℃に加熱しながら12時間行った.TiO_2面に対しては実験前にUV照射をし,超親水状態にしてある.伝熱管上部に内径0.8mmのノズルを5mm間隔で配置し,30℃の水を0.033〜0.083kg/sの流量で流下させる.伝熱管の内管に流入するのシリコンオイルの出入口の温度差から交換熱量と平均の伝熱面熱流束を求めた.シリコンオイルは恒温槽で温度を設定した後に一定のバルブ開度で循環させた.その際の流量は,温度による粘度の違いから0.032〜0.043kg/sと変化した. 平成16年度の一連の実験により,以下の項目が明らかになった. (1)伝熱面上の液膜の観察から,通常面の場合は水がはじかれて液膜が形成できないのに対し,TiO_2コーティング面の場合は非常に薄い安定な液膜が形成された. (2)熱交換試験において,通常面,TiO_2面(UV照射有り),TiO_2面(UV照射無し),の3つを比較したところ,単相領域ではTiO_2面(UV照射有り)が最も伝熱性能が優れており,通常面に対して10〜31%熱交換効率が向上する.
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