研究概要 |
金属酵素の持つ、その特異な活性中心構造や反応性は、一方には小分子の金属モデル錯体によって研究が多く行われてきた。小分子による方法は、構造の単純性から金属イオンの電子状態や反応機構を非常に明快に解明してきた。また他方、金属酵素そのものについても新たな発見が続いている。活性中心には予想外に複雑で大きな配位構造や反応過程が多く見られる。これらは従来の小分子錯体のみでは研究を進めることができない。そこで我々は小分子モデルで得られた合成的手法を用いて、アミノ酸に由来する配位環境まで含めた活性中心へ発展させ、より複雑で大きな活性中心の合成研究を目指している。 実際の研究として、金属蛋白質活性中心の化学合成を目的とし、ペプチド錯体の合成と結晶化を行ってきた。低分子でも蛋白でもない中分子量物質の合成、精製、単結晶作成、X線回折測定・解析は、意外に困難で、長期の試行錯誤を必要とした。平成15年度の実績として、結晶構造データを得られるようになった。例えば、さまざまなβシートまたはヘリックス化合物について合成と結晶化を行うことができるようになった。特に分子量が700-1000以上の化合物については工夫を要した。基本構造には-Leu-Leu-Xaa-(Xaa=例えばL-lactic acid)などの繰返し配列が適しているとわかった。これらの配列は溶解性と結晶性に非常に優れていた。これらを発展させて更にさまざまな配位子を持つペプチドを合成した。これらは金属蛋白質の活性部位モデルとして窒素配位子(His,3-pyridylalanine(=pal))、カルボン酸配位子(Asp,Glu)、硫黄配位子(Cys,Met)のペプチド配列であり、同様に結晶構造を得ることができた。
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