研究概要 |
E-トリフルオロ[2-(フェニルアゾ)フェニル]シランの加水分解により、E,E-ジシロキサンが得られた。X線結晶構造解析により、二つのケイ素はアゾ基の窒素の配位により5配位であることがわかった。E,E-ジシロキサンを室温で2日間静置すると徐々に分解し、E-トリフルオロシランとオリゴシロキサンの混合物を与えることを見いだした。一方、E,E-ジシロキサンに対し2時間光照射すると、Z-トリフルオロシランとともに、アゾ基が異性化したZ,Z-ジシロキサンが生成した。Z,Z-ジシロキサンは各種NMRスペクトルにより、ケイ素が4配位であることを確認した。Z,Z-ジシロキサンは室温、5時間で全て分解し、1モル当量のE-トリフルオロシランを与えた。すなわち、光照射によってジシロキサンからトリフルオロシランの生成が加速されることを見いだした。この反応の中間体として、片方のアゾ基が異性化したE,Z-ジシロキサンの関与が示唆された。 E-アリルジフルオロ[2-(フェニルアゾ)フェニル]シランを合成した。X線結晶構造解析によりE-アリルジフルオロシランのケイ素が5配位であることがわかった。E-アリルシランに360nmの光を照射すると定量的に異性化が進行し、Z-アリルシランが得られた。^<29>Si NMRよりZ-体は4配位であることが示され、アゾ基の光異性化に伴いケイ素の配位数が変化することがわかった。E-体に18-クラウン-6とフッ化カリウムを作用させたところ、テトラフルオロ(N-アリルヒドラジノ)シリカートが生成した。一方、E-体からZ-体へと光異性化させた後に上記の試剤を作用させても反応は進行しなかったが、光照射(λ=445nm)を行うと、上記のシリカートが得られた。以上のように、光異性化が進行して配位数が変化することを鍵として、多段階反応の進行の制御を達成できた。
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