研究概要 |
近年、超分子かご状化合物の内部空間を反応場とした化学反応系の構築が注目されている.この方法を用いれば、超分子を精密に設計することで、内部空間での反応に様々な選択性を賦与することが可能となる.特に、タンパク質は精密な高次構造を形成している非常に魅力的な超分子化合物であり、これまでも、タンパク質を金属化合物と複合化する研究が報告されてきたが、その複合体による触媒反応を制御するまでには様々な問題をクリアする必要がある.そこで、本研究では球状タンパク質であるフェリチンに着目した.フェリチンは、生体内で鉄を貯蔵する働きを担い、24個のサブユニットから形成されたその構造は、外径が12nm、内部に8nmの空洞があり、ここに鉄が貯蔵される.また、フェリチンの内部と外部をつなぐチャネルとして、サブユニット同士が交差することで作り上げられた3回対称と4回対称の2種類のチャネルが存在する.これらのチャネルを通り、金属イオンや有機分子がフェリチンの内部へと進入する.そこで、フェリチン内部を利用したPdナノ粒子作成、および作成したPdナノ粒子を触媒としたサイズ選択的オレフィン水素化反応を行ったところ、CH_2=CHCONH_2の水素化反応ではTOFが71.5となり、フェリチン1分子当たりに換算すると、TOF=33,000に相当し、Pd・apo-ferritin内に一度に約5,000個の基質を取込可能であり、Pd・apo-ferritin当たりのTOFに換算すると、1時間でPd・apo-ferritin内部の基質の総入れ替えが7回生じたことがあきらかとなった.
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