研究概要 |
遷移金属錯体上での酸化的付加過程における立体化学の問題として,ビスオキサゾリニルキサンテン(XABOX)とロジウムからなる錯体にてジイン類が酸化的付加し環状骨格のメタラサイクルを形成する際の立体化学について検討した。その結果,末端置換によって立体選択的にメタラサイクル錯体が生成することを見いだした。XABOX配位子は,そのRhCl_3錯体のX線結晶解析からフェイシャル(cis-cis)配位をすることを明らかにした。メタラサイクル錯体は,アセチレン類の三量化反応の触媒となることを見いだした。ビスオキサゾリニルキサンテン配位子の合成とロジウム錯体の調製XABOXは,塩化ロジウムとエタノール中加熱することによりRhCl_3(XABOX-ip)が生成することを見いだした。X線結晶解析により,配位子のXABOXはフェイシャル(cis-cis)配位であることが判明した。クロロ酢酸エステルとの反応では,選択的にXABOX配位子の酸素原子のトランス位にメトキシカルボニルメチル基が配位した錯体のみが得られた。電子的ならびに立体的影響を見るに極めて重要な知見である。さらに,新たな不斉触媒開発を目指して種々検討したが,不斉ヒドロシリル化あるいはルテニウムとの組み合わせによる不斉シクロプロパン化反応では反応収率ならびに光学収率において良い結果は得られかった。しかし,モリブデンおよびマグネシウムとの組み合わせによる1,3-双極子付加反応において良好な結果を得た。特にマグネシウム触媒では,ニトロンとアクリロイル基質6の付加反応でエンド:エキソ比94:6,エンド体は96%eeを与えた。フェニシャル配位子であるXABOXとロジウムが作る配位立体環境でも十分不斉誘導が見込めることを示したものと考えられる。この錯体触媒系を用いる不斉触媒反応の開発が期待できる。
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