研究概要 |
キラル1,2-ジアミン構造の不斉触媒におけるリガンドとしての有用性に着目し、高分子への固定化を試みた。1級のジアミン構造を残したまま高分子に固定化するためにフェノール性OH基が有用であることがわかった。OH基の導入位置を決めるために種々のキラル1,2-ジアミンを合成し、これらを野依らによって開発された不斉水素化反応におけるキラル配位子として用いた。アセトフェノンの不斉水素化反応についてRuCl_2[(R)-binap(R,R)-diamine](dmf)_nを用いて行った結果から、パラ置換型のキラルジアミンの合成が適切であると考えた。高分子への固定化が可能なキラル1,2-ジアミンとしてフェノール性水酸基を有するジアミンを合成した。アミノ基をBocで保護した後、ラジカル重合による高分子の生成が容易な重合性官能基としてビニルベンジル基を導入した。このキラルモノマーはスチレンとの共重合が可能であり、対応する高分子固定化型キラル1,2-ジアミンを容易に合成することができた。合成したキラルモノマーは2官能性モノマーであり、スチレンとの共重合により架橋構造を形成する。したがって得られた高分子ジアミンは有機溶煤に不溶性であり、反応系からの分離を極めて容易に行うことができる。また不溶性であっても架橋は柔軟な構造を有しているため、有機溶媒中で充分膨潤し、高反応性を維持できる。さらにポリスチレン鎖とキラルジアミン部分との間にスペーサーを導入した構造も合成した。合成した高分子固定化型キラル1,2-ジアミンの不斉配位子としての有効性を評価するために、不斉水素化反応への応用を行った。いずれの場合も低分子触媒系と同等の反応性、立体選択性を示すことがわかった。さらに、高分子固定化型触媒は、リサイクルを容易に行うことができ、数回のリサイクルで、触媒の失活はまったく見られていない。
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