研究課題
特定領域研究
動脈硬化などの血管病は傷害に対する修復機構を契機として局所の細胞増殖によって生じると考えられている。成体にも様々な臓器への分化能を有する幹細胞が存在することが近年明らかになった。血管病の発症と進展における血中前駆細胞の関与を検討した。(1)マウス異所性心臓移植モデルにおいて、グラフト動脈硬化病変の大部分はレシピエント由来細胞で構成されていた。(2)骨髄置換マウスの大腿動脈に機械的傷害を加えた。再生内皮、新生内膜、中膜の一部が骨髄由来細胞で構成されていた。(3)高脂血症マウスに骨髄移植を施行したところ、粥腫平滑筋細胞の半数は骨髄由来細胞であった。高度進行した動脈硬化病変においても骨髄由来細胞が病変部に集積しており、平滑筋様、内皮様細胞に分化していた。(4)31〜48週齢のApo E欠損マウスの進行した動脈硬化病変において内皮細胞と平滑筋細胞のアポトーシスが高頻度に認められた。GFPマウスの骨髄を移植したのち、80〜83週齢において粥腫ならびに外膜にGFP陽性細胞が集積していた。これらの骨髄由来細胞の一部は平滑筋細胞もしくは内皮細胞のマーカーを発現していた。骨髄由来内皮様細胞は管腔側内皮のみならずプラーク内および外膜の新生血管にも認められた。粥腫内石灰化部位において骨髄由来細胞が骨芽細胞関連蛋白を発現していた。(5)マウス、ラビット、ヒトの末梢血単核球をPDGF-BBと塩基性FGF中で培養することで、αアクチン陽性細胞を分化させることができた。スタチンは平滑筋様細胞への分化を抑制した。高脂血症、加齢などによって血中の平滑筋前駆細胞数は増加した。以上より、骨髄細胞などから前駆細胞が血中に動員され、血管修復と病変形成へ貢献すると考えられる。血中の血管前駆細胞は、動脈硬化の診断、治療における新しい標的になると期待される。
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